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栞里の腰回りに手を伸ばした小太りのおじさんは地面にうずくまっている。
股間を両手で抑えて生まれたての小鹿のようにプルプル震えている。
「・・・はっ!
しまった」
全てが終わってしまってから自分のとった行動に頭を抱えたくなる。
「またやってしまった・・・」
栞里はうずくまっているおじさんを見て思い出したくない過去を思い出す。
「ちょ・・・
何があったの?」
異変に気付いた鳴海さんが駆け寄ってくる。
「いきなり腰回りを触られたので撃退してしまいました」
栞里は正直にやったことを白状する。
しかしおじさんは往生際が悪かった。
「お、お前・・・
自分が何をしたのかわかっているのか?
こんなことをしてただで済むと思うなよ・・・」
痛みに体を震わせながらも上から目線の言葉を続ける。
「痴漢は犯罪ですが?」
「くっ、もう業界で仕事が回ってくると思うなよ・・・」
おじさんはまだ自分の方が立場が上だと思っているようだ。
だがおじさんと栞里は全く無関係だ。
「あの・・・
申し訳ありませんがディレクター・・・
この子、ただの一般人なんです」
「・・・な、なに?」
鳴海から聞いた真実に驚くおじさんの表情は絶望が入り混じっていた。
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