第三章 本当と偽り

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「関係者以外がどうしてこんなところにいる?  部外者が立ち入っていい場所ではない」 「今スカウトの真っ最中でして・・・  仕事の見学のために許可を出したんです」 おじさんは固まって動かなくなってしまう。 どうやら業界に所属するモデルの一人だと思ったのだろう。 過剰なボディタッチも自分の権力があれば許させる。 その思い上がりが栞里に手を出し、見事に返り討ちにあってしまったのだ。 「あの、栞里ちゃん?  とりあえず今回のことだけど・・・」 「痴漢は犯罪行為なのでとりあえず警察ですよね」 栞里が携帯電話を取り出す。 その瞬間おじさんと鳴海の顔が引きつる。 どうやら穏便に済ませたいようだ。 しかし栞里がその真逆の行動に出ようとしていることに焦っている。 「お、俺は触っていないからな」 「最近は衣服からも指紋が検出できるのでなんとでも言ってください」 言い逃れをしようとするおじさんを一言で撃沈。 他のスタッフや撮影クルーも万事休すと状況を見守っていることしかできない。 「・・・ったく、何やってんだよ」 そこに誠治が遅ればせながら参上した。
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