第一章 演者と自由人

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日曜日、自宅にいた栞里のもとに誠治が訪ねてくる。 「これ、この前の課題のお礼な」 そう言って渡してきたのは袋に詰められたスイーツの数々。 「う、うわぁ・・・  ありがとう」 栞里はそれを目をキラキラと輝かせながら受け取った。 「それでお前、家で何してんの?」 「え?  手紙の返事」 「はぁ?  せっかくの日曜日に何やってんだよ」 「だって、まだ自分のクラスしか終わってないんだから  他のクラスと学年も全部返さないと不公平でしょ?」 「マジかよ・・・」 「でも内容である程度分別はしてあるから後は書くだけなんだ  今日は一年二組から始めたんだけどもうすぐ六組が終わるよ  今日中に一年生は全部終わるペースだよ」 山のようなラブレターに真っ向から向き合う栞里。 その姿を見ている誠治は何となく不安な気分に駆られた。 「お前さぁ・・・  そんな生き方していて楽しいのか?」 「・・・え?」 誠治の唐突な質問に栞里は言葉が詰まる。 なんて返せばいいのかわからなかったため、とっさに返事ができなかったのだ。 「まぁ、お前がそれでいいならいいけどな  でも無理だけはするなよ」 誠治はそう言い残して栞里に背を向けてエレベーターへと向かう。 「・・・無理、かぁ」 誠治の言い残した言葉は的を射たものだった。 その言葉によって栞里の心の中はかなり複雑であった。
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