第二章 期待と重圧

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もともと足の速さには自信のある栞里。 そこに必死さが加わればさらにその速度は増す。 そして追跡者達の裏をかくべく頭を使い、巧妙にその身を隠していた。 二限目が終わった休み時間は職員用の女子トイレへ身を潜めた。 三軒目が終わった休み時間はグラウンドの隅っこで息を潜めていた。 そして四限目が終わった昼休み、栞里は弁当を片手に屋上に来ていた。 「はぁ・・・はぁ・・・」 息も絶え絶えに屋上の地面に腰を下ろす。 「あ・・・  飲み物・・・忘れた・・・」 走ったことでほしくなり、食べるときに欠かせない飲み物。 それが急いでいたせいで手元になかった。 ガックリと肩を落とす栞里は飲み物なしでの昼食に踏み切るかどうか悩む。 「あっ、姫神」 「ひぃっ!」 名前を呼ばれたことで悲鳴が漏れてしまう。 「そんなに驚くか?  まぁ、気持ちはわからなくもないか」 「あ、海崎君・・・」 クラブ勧誘を目的とした上級生でないことに安堵の息をつく。
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