第二章 期待と重圧

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「海崎君はどうしてここに?」 「ここは俺の定位置だよ」 「ま、まだ入学して二週目だよね?」 「時間の問題じゃねぇだろ」 誠治は特にためらうこともなく、屋上の地面に座り込んだ栞里の隣に座った。 「・・・ほら、やるよ」 「え?」 誠治は栞里にペットボトルのお茶を差し出す。 「でもこれ・・・」 「俺はいつも昼飯の時は飯用と食後の休息用に二本持ってるんだよ  今日は特別に一本やる」 「あ、ありがとう」 誠治の気遣いを栞里はありがたくもらうことにした。 (・・・あれ?  でも海崎君って先週課題の話をした時は教室で食べてなかったっけ?) 屋上を定位置という誠治の言い分に栞里は少し違和感を覚えた。 (もしかして・・・  私が飲み物を忘れたのに気付いて持ってきてくれた?) 今回の誠治の行動に栞里はどことなく彼に好意的な印象を持つようになった。 もっとも彼が一体どのような考えで行動したのかはわからないままだった。 その答えを聞く機会と行動力が今の余裕のない栞里には欠けていたためだ。 誠治も特に多くを語ることなく昼食を食べ始める。 それを見て栞里も弁当を広げて昼食を食べ始めた。
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