第二章 期待と重圧

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「お前の弁当うまそうだな」 「え?」 屋上で昼食を食べる栞里と誠治。 誠治は栞里の弁当箱をのぞき込むとボソッと本音を一言つぶやいた。 「何か一品くれよ」 「え、でも・・・  は、恥ずかしいよ」 「どうして?」 「まずいって言われないか不安だし・・・」 手作り弁当はあくまで自分のためのものだ。 味付けに触感など、自分がおいしいと感じるように作られている。 口に合うかわからないものをほしいと言われて渡す。 さすがにそこまで料理の腕に自信がない。 「いいじゃねぇか  じゃあ勝手にもらうわ」 「あっ!」 「これでまずくても悪いのは勝手にとった俺だからな」 誠治はそう言って栞里の弁当箱から奪った卵焼きを口の中に放り込んだ。 「・・・うまっ!  甘い卵焼きとか初めて食ったぞ」 思いのほか高評価で栞里は安堵するとともにかなりうれしかった。
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