第二章 期待と重圧

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その後も各クラブを回り続ける。 音楽合唱部ではカラオケで鍛えた声量が生きた。 小学校の頃にはよく鍵盤ハーモニカの役をやらされていた。 そのためピアノを想像以上に上手に弾いてしまった。 テニス部では身体能力を発揮して素人とは思えない動きを見せた。 バスケ部では適当に放ったシュートのほとんどが決まってしまった。 柔道部では投げられそうになった時にたまたま相手の足が引っ掛かり返し技。 演劇部ではそもそも毎日が演技であることから臆することなく演技をする。 芸術部では失敗した絵を先生が勝手に見事な抽象画と受け取っていた。 偶然が重なり、幸運が連発したのか、栞里はすべてのクラブで活躍した。 これによりさらに栞里をめぐるクラブ同士の勧誘合戦はヒートアップする。 周囲の期待と勝算が高まる中、栞里の体力と精神力は確実にすり減っていた。 ラブレターの返事は書けば書くほどさらに新たな手紙が栞里のもとに届く。 返事が来ることを知ったファンとも呼べる人たちが栞里に手紙を出すのだ。 そして返事が来ればそこにさらに返事を書く。 書けども書けども栞里の手元から返事待ちのラブレターの数は減らない。 終わらない永久作業を続けながらもクラブ活動は何とかすべてを回りきった。 しかし休むことができなかった体は一区切りがついたこともあったのだろう。 ついに限界を迎える時が迫っていた。
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