第二章 期待と重圧

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一緒に下校する栞里と誠治。 二人の間にこれといった会話はない。 無言のままただただ帰路を歩く。 しかし無言であれば無言であるほど、栞里はさっきのことを思い出してしまう。 自らの目の前に整った誠治の顔。 額と額が当たる、接触するだけの近距離。 それを思い返すだけで頬が赤に染まる。 (ほ、保険のが先生彼とかいうから・・・  よ、余計気にしちゃう・・・) 本来ならもう帰っていてもおかしくない時間帯。 そんな遅くまで栞里のために待っていてくれた。 熱があると告げたらその熱を測る気遣い。 体調の芳しくない栞里に合わせた歩幅。 さらに過去にさかのぼれば昼食時に飲み物を持ってきてくれたこともあった。 そういった優しさや気遣いが一気に集約されて栞里の頭の中を何度も反芻する。 異性として意識するな、そういう方がもう無理な状況になっていた。
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