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「待っていてね
もう少しでできるから」
「は、はぁ・・・」
いきなり上がり込んできた鳴海に台所を占拠されてしまった。
栞里は諦めの境地で再びラブレターの処理に入る。
「・・・あ、そうだ」
ラブレターの処理をしている手を止め、栞里は鳴海に問いかける。
「鳴海さん
少し聞きたいことがあるんですが・・・」
「なに?
直近のオーディションはいつかって?」
「いえ、違います」
鳴海はまだ栞里を芸能事務所に誘い入れることを諦めていない。
今回の訪問もその足掛かりにしようという野心が完全に見えてしまった。
だが、今はそんなことはどうでもいい。
「昔の海崎君ってどんな感じだったんですか?」
栞里のその問いに今まで警戒に動いていた鳴海の手が止まる。
「ちょっと気になって調べてみてもそれらしい記事がなくて」
数秒間、硬直して手を止めていた鳴海はそのあと無言で料理を再開する。
その雰囲気はどことなく触れられたくないものだったことがわかる。
それだけの重い空気が部屋の中に漂った。
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