第二章 期待と重圧

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真面目で努力家、利口な性格。 それは物心つく前からその世界にいなければならなかったゆえのもの。 大人達に喜んでもらうために作りだした不本意な自分。 母親に褒められたくて続けていた表の自分。 みんなの人気者であり続ける宿命を背負わされていた日常の重し。 小さかった誠治はそれが当たり前だと思ってすべてをこなしていた。 しかしそれは成長とともに誠治の心を蝕んでいく。 体は酷使され続け、心は家の中でも休まることがない。 その日常を当たり前だと思っていたために逃げ道も知らない。 そんな誠治は小学生のある日、学校で相手に怪我を負わせる喧嘩をした。 多大なストレスと逃げ道のない圧迫感からの精神的限界。 それが子ども同士の些細な言動で一気に爆発してしまった。 どれだけ人気者で大スターで有名人の子供でも人間であることに変わりはない。 様々な思いが日常にあって、その日々が当たり前になりすぎてしまっていた。 非日常の連続だと誰もが気付かなかったがためのちょっとした事件だ。 そしてその事件以来、海崎誠治は子役をやめた。 それ以降芸能活動は一切しなくなり、性格も大きく変わってしまったらしい。
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