2人が本棚に入れています
本棚に追加
「有名人の子供が役者になるときって子供の時からやっているの
もしくは親の背中を見て思春期にやりたいと思うかのほぼどちらか
私は前者を選んだつもりがあの子に押し付けてしまっていたのよ」
普段の様子やトーンからは考えられない。
言葉が詰まることもなく、しかし淡々としているわけでもない話し方。
どこか達観した雰囲気さえ感じられる。
「最近ようやくあの子に仕事しないから私が忙しいって言えるようになったの
軽口で仕事の話を出せるようになるのに結構かかったわね」
「そ、そうだったんですか・・・」
思わぬところで誠治の子供時代の話を聞くことができた。
そして彼が言っていた『似ている』の意味もよく理解できた。
「私は一人の母親になれなかったの
いつまでも演者で、いつまでも有名人で、いつまでも経営者だった
そのしわ寄せが我が子に言っているなんてことにも気づけなかった
私はただのバカな人間よ」
栞里は話を聞いて思った。
誠治は恐らく自らに嘘をつかない素の自分でいようと日々心掛けている。
それを日々思い、経験していたからこそ、栞里に違和感を覚えた。
誠治が栞里に対する気遣いは過去の自分を助けようとするもの。
それと同時に新しい過去の自分を生み出さないためのものだった。
最初のコメントを投稿しよう!