第三章 本当と偽り

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クラブ勧誘の一件があってから栞里の周囲はかなり静かになった。 しかも有耶無耶になってしまって栞里は結局所属するクラブが決まらなかった。 クラブ無所属なのに先生は何も言わない。 周囲もそれとなくクラブに入るのか探りを入れてくる人はいる。 しかし栞里としても倒れてしまったことで後ろめたい気持ちがある。 今更どのクラブに平気な顔をして所属するのは心境的にも難しかった。 「みんながクラブ活動している間に帰るのか」 四月も終盤に差し掛かったころ、学校生活はようやく落ち着きを見せていた。 届くラブレターの量も爆発的な多さが毎日ということはなくなった。 しかしそれは栞里の人気が落ちたというわけではない。 ラブレターは栞里の返事を待ってからまた手紙を書く。 そう、ラブレターから文通へと様変わりしていた。 つまり返事が来るまでは手紙を出してはいけない。 なるべく栞里の体に負担をかけないようにする処置だ。 そんな暗黙のルールがファンの間で勝手に作られたのだった。
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