第三章 本当と偽り

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家に帰ってからはなるべく理想の姫神栞里を貫き通すために努力をする。 学校で習った場所を復習し、できる限り予習も行う。 周囲が勝手に持ったイメージを崩すだけの勇気が栞里にはない。 そんなちょっとした流されやすい臆病な性格がより完璧を追及させていた。 そしてその努力は早々に実を結ぶ。 ゴールデンウィーク前に行われた実力テスト。 その上位に食い込んだ面々の順位が張り出された。 「うわぁ・・・  姫神さん総合順位で一位?」 「各教科も全部五位以内だよ」 「得手不得手がなくて全部できるなんてすごいね」 「そりゃ、入試トップで新入生総代やれるよ」 実力テストでの結果は栞里の想像以上によかった。 むしろ入試と立て続けに人生で奇跡的な高得点といっていい。 中学までの自分では考えられなった自分がここにいた。 そしてそれを自慢していいのかわからない。 なぜなら心の中ではちょっと複雑な思いが渦巻いているからだった。
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