第三章 本当と偽り

9/36
前へ
/136ページ
次へ
「それであんた、明日はどうするの?」 「明日?  うーん、テレビの収録でも見に行こうかな」 「なに?  芸能界入りでも目指しているの?」 「そんなんじゃないよ  クラスメイトが来るの」 「え?  クラスメイトに芸能人がいるの?」 母親が驚いて栞里に詰め寄ってくる。 「違うよ  クラスメイトのお母さんが芸能事務所の経営をしているの  クラスメイトはそのお手伝いなの」 「なによ  ちょっと期待しちゃったじゃないの」 「・・・勝手に思い込んで勝手にすねないでよ」 高校に入学する前の変わらない日常がここにある。 入学する前の自分はこんな感じだった。 それを思いだすのに母親との会話は実に有効な手段でもあった。 この日はたくさん母親と話をした。 思った以上に心に負荷がかかっていたのかもしれない。 リフレッシュになっているのかどうかはわからない。 だが少なくとも心身の固さが和らいでいる感覚があった。 栞里はそれを求めるようにたくさん母親と言葉を交わす。 たった一か月離れていただけとは思えない会話量。 母親もそれをわかっているのか察しているのか定かではない。 しかし栞里と多くの言葉を交わしてくれるのだった。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加