第三章 本当と偽り

11/36
前へ
/136ページ
次へ
「あら?  栞里ちゃん  どうしたの?  将来のための見学?」 「違います」 栞里の即答に鳴海はがっくりと肩を落とす。 「まぁそう言うよね  今日は普通に見に来ただけ?」 「はい  テレビの撮影って昔から出くわしたことなかったので気になりました」 「そう  無理強いはしないけど、業界を垣間見て心が動いてくれることを願うわ」 「あ、諦めないんですね」 「もちろん  この業界は諦めた人から消えていくっていうのが常識よ  それは表の人も裏の人も一緒ね」 鳴海はまだ栞里を自分の事務所のタレントとして契約することを狙っている。 おそらくここ数日で鳴海の決意が変わることはないだろう。 「・・・と、いうことで栞里ちゃんには大サービス」 「え?」 「スタッフってことにして観覧よりも近い場所で見学させてあげるわ」 「い、いえ、そんなの・・・」 「気にしないでいいのよ  せっかくだしね  あっちに机と椅子が置いてあるスペースがあるからそこで待っててね  もうすぐ誠治も来ると思うから」 「え?  海崎君も来るんですか?」 「手伝いだからね  本当はタレントとして連れてきたかったんだけど・・・」 鳴海は何かを考えるようなしぐさを見せながら栞里をチラリと見る。 そして忙しいのか少し足早に栞里の前から立ち去って行った。 一人残された栞里は指定された机と椅子が設置されている場所へと移動する。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加