第三章 本当と偽り

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いわゆるスタッフ席という場所。 折り畳み式の椅子や机が置かれている場所に栞里はやってきた。 「・・・確か今日は短時間の撮影だったよね?」 短時間の撮影で設置されたのは今日。 しかし折り畳み式の机の上は紙やら小道具やらでごった返していた。 「テレビの撮影ってこんなにいろいろ使うのかな?」 見学は許可されたものの栞里は全くの第三者。 机の上の資料や小道具には一切触れないようにする。 やや離れたところにいる観覧のお客さんの視線がちょくちょく栞里に集まる。 どうやらテレビに出るタレントと思われているようだ。 「やっぱりここは場違いだよねぇ」 周囲の視線が集まるのには慣れた。 しかし気分は決していいわけではない。 栞里は別に人から注目されたいと思っているわけではないのだ。 「おや?  今日のモデルちゃんはずいぶんかわいらしい子がいるねぇ」 「え?」 周囲の視線と机の上の散らかりに気を取られていた栞里。 いつの間にかその傍らにスーツを着た小太りのおじさんが立っていた。
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