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あの洗濯機がうちから消えて以来、おかしな事は起こっていない。
夜中の怪音もなくなり、部屋の異臭も消えた。
まるで最初から何もなかったみたいに。
食欲も戻り、安眠も戻ってきた。
ほんの数日間の事だったけれど、あれは一体何だったんだろう。
あの洗濯機にどんな謂れがあって俺の元にやってきたのか。
あの老婆は誰なのか。
どうしてあんな風に洗濯槽の中に入っていたのか……。
今となっては何も分からないし、分かりたくもない。
きっとあのまま処分されてしまったのだと信じたい。
ただ……今でも時折思い出すのだ。
あの、洗濯槽の中で膝を抱えて座っていた、白髪の老婆の濁った眼差しを……。
了
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