リサイクル

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俺の口から意味を成さない叫び声が弾けた。 思い通りに動かない手足をばたつかせて、どうにか玄関を出る。 アパートの廊下を泳ぐように逃げる俺の後ろで、玄関ドアが閉まった鈍い音がした。 幸いにも自転車の鍵がジーパンのポケットに入れっぱなしになっていた。 盛大な音を立てながら自転車を引っ張りだすと、そのまま夜の町をかっ飛ばして友人の家に転がり込んだ。 とにかくパニクっていたので、多分友人も俺が言うことを理解するのに時間がかったんではないだろうか。 目を血走らせて喚き立てる俺をどうにか落ち着かせるために、温かい物を飲ませてくれたり、シャワーを使わせてくれたりと世話を焼いてくれた。 突然押しかけ、意味不明な言葉を発する俺を放り出しもせずに一晩泊めてくれた事に、心からの感謝しか出来ない。 翌朝、幾分落ち着いて事情を説明する。 最初は半信半疑のようだったが、昨夜の俺の様子を取り乱し様を思い出したのか最終的には青い顔をして話を信じてくれた。 あの洗濯機のある部屋に戻るのは嫌だったが、鍵もかけていないし、金も持っていない。 ネカフェに泊まるにしても、一度帰って身の回りの物を持ち出さなくてはいけない。 友人にこれ以上世話になるのは気が引けたが、どうしても自分一人で戻る事が出来ず、渋る友人を拝み倒してついて来てもらうことにした。 自分の部屋なのに玄関を開けるのが怖い。 ドアの前に立って乾いた唇を何度もなめる。 無理に唾を飲み込むと、意を決してノブを回す。 やはり鍵はかかっていなかった。 金属扉の開く音が廊下に響く。 その音が俺の神経を逆撫でする。 開ききったドアの向こうには……見慣れた部屋が広がっていた。 誰もいない。 誰かが侵入した様子もない。 ふーっと息を吐き出すと、さっさと用事を済ませてしまおうと部屋に入る。 俺の後ろから友人も入ってきた。 放り出してあった財布を尻ポケットにねじ込み、洋服ダンスの中から当面必要だと思われる衣類を引っ張りだしてリュックに詰め込む。 用心のためにガスの元栓を閉め、電気のブレーカーを落とす。 戸締まりを確認して部屋を出ようとすると、友人が 「これが問題の洗濯機なんだろ? どうするんだ?」 と聞いてきた。 正直、部屋に入ってからソレを意識して視界に入れないようにしてきたのだ。 「どうする?」と言われても、どうしていいのか俺にも分からない。
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