リサイクル

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リサイクル業者に引き取ってもらう事も考えたが、もしも次にこの洗濯機を使う人が同じ経験をしたら……と思うと、それも躊躇われた。 出した金額は惜しいが、これ以上恐ろしい目に合うのは御免だ。 一週間ぶりの自宅へ、洗濯機を引き取りにきた業者の人と一緒に入る。 事の次第を知っている友人も、バイトを休んでついて来てくれた。 閉め切っていた部屋は蒸し暑く、埃っぽく、空気が淀んでいる。 業者の人はガムテープでグルグル巻きになった洗濯機を見て、一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐに何でもなかったように作業を開始してくれた。 その間にカーテンを開き、窓を開け、部屋中の空気を入れ替える。 さすがにプロの手際は良く、あっという間に洗濯機は外され部屋の外へと持ち出された。 ひょいと覗くと、排水口の周辺もしっかりと拭き清められ、蓋がキッチリとされている。 「あの……」 何と言いたかったのか分からないが、思わず俺は業者さんに向かって声をかけていた。 「はい、何でしょうか?」 書類へ視線を落としていた業者さんが振り向く。 「あ、いえ、その……」 言葉を探してオロオロしている俺を見て、彼は真面目な顔で答えてくれた。 「こういう仕事ですから、色んな物を目にしますよ。それについて何もお聞きしませんし、何も言いません。そういう事もあるんだな、それだけです。やるべき事もそうでない事も分かっておりますので、ご安心下さい」 自分に降りかかる不幸を他人に肩代わりしてもらうようで気が滅入ったが、彼の返答に抱えていた重石を降ろせたような感じがした。 財布は相当に軽くなってしまったが、件の洗濯機を積み込んだトラックを見送り、俺はようやく楽に呼吸が出来るようになった気がした。 部屋に戻ると、あれだけ淀んでいた空気が消え、明るくなったように思える。 「もう、大丈夫そうだな」 「ホントに世話になった、助かったよ」 友人には頭が上がらない。 これからは足を向けて眠れないよ。 何とかお礼をしようと思ったんだが、それは友人に止められた。 「今回の事で随分と金も使ったし、今月苦しいだろ? 次の給料入ったら、焼き肉奢ってくれよ。それでチャラな!」 そう言って帰っていった。 かっこ良すぎるだろう、お前。 惚れちまいそうだよ。 それから実家に電話をして、週末には洗濯をさせてもらえるように頼み込み、それ以外は駅近くのコインランドリーを使うことにした。
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