父への思い

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僕は、目を覚ました。 どのくらいの時間、眠り続けたのであろうか? 目を開けると、見慣れない白い天井が見えた。 母の声が聞こえた。 「ひろし、大丈夫?」 僕は、まだ状況が分からず、ぼーっとしていた。 少しするとお医者さんが、僕の様子を診に来た。 きっと、母が呼んだのであろう。 僕は、ここは病院だと気が付いた。 少しずつ状況が分かり始めた。 僕は、川で溺れて、病院に運ばれたのである。 母が、涙を流していた。 だが、父の姿が見えなかった。 僕は、母に聞いた。 「お父さんは?」 母は、なかなか話そうとしてくれなかった。 母は、少し悩みながら、言葉を選ぶように慎重に僕に話しをしてくれた。 「実はね、ひろし…  お父さん、さっき息を引き取ったの…  お父さんは、川で溺れたひろしを助けようとして、自分も溺れてしまったの!」 僕は、何も言葉が出なかった。 ただ、悲しさが込み上げてきて、涙が溢れだした。
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