父への思い

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休日のある日、僕は近所のコンビニで買い物を終えて帰宅する途中、よくアルバイト先の喫茶店に家族で来店してくれる、翔太君と結衣ちゃんが川で遊んでいるのを見かけた。 翔太君は、川に足を踏み入れていた。 今日は晴天で、川は緩やかな流れだったため、大丈夫だろう…と思った。 でも、自分の怖い体験が脳裏をよぎり、僕は河原の土手に座って、2人の様子を遠くから眺めることにした。 翔太君と結衣ちゃんは、楽しそうに遊んでいた。 僕は、天気が良かったため河原の土手でうとうとしていた。 すると突然、結衣ちゃんの悲鳴が聞こえた。 「おにいちゃん」 僕は、飛び起きて、悲鳴の聞こえる方向を見ると、翔太君が川に流されていた。 僕は、一瞬たじろいだが、考えている時間はなかった。 川が怖いなんて、思う間もなかった。 僕は、急いで川に駆け付けて、結衣ちゃんに、 「早く誰か呼んできて!」 と叫んで、流される翔太君を横目に、川下に急いで走った。 少し浅瀬になっている場所から川に入り、翔太君を受け止めようと考えた。 溺れている翔太君は、完全に我を忘れて、水の中でもがいていた。 小学校5年生とはいえ、川の中でもがいている翔太君を受け止めるのは、とても難しいだろうと感じた。 でも、やるしかない! 僕は、翔太君の体をがっちり受け止め、必死に叫んだ。 「翔太君、落ち着け!」 僕の叫びは、翔太君の耳には入っていないようだった。 我を忘れて水の中でもがく翔太君を支えることができず、僕は何度も足を滑らせた。 僕も呼吸をするのが難しい状態だったが、何とか川岸にたどり着いた。 川岸には、見ず知らずの男の人がいて、翔太君を助け出してくれた。 僕は、水を多く飲んで苦しくなり、そのまま意識を失った。
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