インナーアクシデント

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インナーアクシデント

冬の僅かな晴れ間を狙って、洗濯物をベランダに干したいのは、鈴音のただの我がままだ。 兄弟たちはこれまで、まとめて乾燥機に突っ込んでそれで終わり。 でも寒いこんな季節だからこそ、おひさまの匂いだとか、雪が降る直前のツンとした匂いだとか、洗濯物を干しながら感じるのが好きなのだ。 しかし、北海道の田舎から出てきて、こちらではなかなかその匂いをわかってくれる人はいない。 来生家の次男、夏樹は、 「雪が降る前? 俺、寒みーの苦手だから外には出ない」 と言うし、三男、秋哉は、 「冬といえば焼きいもだよなっ! あれ嗅ぐとゼッテー腹減るよな」 気持ちはわかるが、ちょっとムードがない。 ロマンチックな四男、冬依は、 「うん、冬の朝って空気が澄んでるよね」 優しいので鈴音に話を合わせてくれるが、この季節はたいてい風邪をひいていて、形のいい鼻はマスクの中だ。 多分、冬の匂いなんて嗅げないだろう。
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