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しかし鈴音は、なんだかぼうっと宙を見つめていて、
「……」
「おい、鈴音」
改めて夏樹に呼ばれて、ハッと我に返る始末。
「え、何? ごめん」
夏樹の声などまるっきり聞いていた様子はなく、夏樹はちょっとへそを曲げる。
「別に何でもねーよ。ぼーっと口開けてんじゃねー。マヌケ面がますます抜けて見えるぞ」
これが春一相手なら、鈴音は一言一句聞き漏らすことなどないんだろうなと思えば、なおさら腹が立ってくる。
まあだからこそ、いくら婚約者の弟とはいえ、男ばっかり4人も暮らす家に、鈴音は同居していられるのだ。
鈴音が春一に向ける気持ちに、これっぽっちの揺ぎも見えない。
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