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風邪ひき騒動
来生家のリビングで雨山鈴音と来生夏樹のふたりが、のどかな昼下がりの時間を過ごしている。
長男の春一は仕事だし、三男四男の秋哉と冬依は学校からまだ帰ってこない。
夕食の支度には少し早く、特にすることもない、そんなぽっかりと空いた時間。
夏樹はコーヒーの入ったマグカップを手にしながら、面白くも無いテレビを眺めていた。
テーブルの向かいに座る鈴音が、今日はえらくおとなしい。
もともと口下手であんまり騒がしいタイプの女ではないが、それでも今日は、いつにも増して静かだ。
「なあおい、何かえらくふさぎ込んでんじゃねえ? 悩みごとでもあるなら、話を聞いてやんなくもないぜ」
いつもの尊大な調子を崩さないよう、鈴音に聞いてみた。
兄の婚約者であることは認めてはいるが、それでも一応、恋人候補のひとりとして名乗りをあげている身だ。
弱っていると見たら、付け入らなくてどうする。
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