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「なんにせよ。小雪を連れてこいとは難しすぎる」
銀矢は座敷に寝転がる。
「簡単ではないよね。でも次世代交代の時期でお世継ぎが全員亡くなっていては他を頼るより他ないのだと思う」
「白羽は白夜党の存続を願うのか?」
「できるなら、僕は白夜党の医者としてこの地に住みたいと思っているよ」
「そいつは素敵な志で」
銀矢は白羽から視線をはずす。
白羽は忍ではなく医者として生きていくと言って白夜に拾われてきた。まだ、十七歳で医学書を読み漁り、戦で救護班として働いている。本日はたまたま戦の中休みで帰省しただけの話であった。
「まてまて。小雪殿が白夜党を継ぐと確定したわけではあるまい。銀のいうとおり、小雪殿を説得するのは難しい」
酒を煽りぼやくように信濃が言った。
「日乃目一件で僕ら嫌われちゃったもんね」
白羽が医学書を整理し始める。夕食の時間が迫って来たのだ。
「あれは、事故だよ」
銀矢は目を閉じる。
日乃目は崖から落ちたのだ。
「僕には自殺に見えたけど」
白羽が間髪入れずに言った。
「私には風の強さに押し流されたように見えたがな。何れにせよ、銀は日乃目に触れていなかった」
信濃が言葉を補うように呟いた。
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