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酔いの回った信濃からまともな疑問を聞いたような気がして、銀矢は胡座を掻いた。
「さあな」
銀矢は無責任に呟いて膝に肘をつき、頬に手を押し宛ると、日乃目の一件をつらつら思い出す。
3
猛吹雪で今昔森を出歩くなど狂気の沙汰であった。
視界は雪に遮られ、藁長靴も雪に取られるような環境であった。
吐く息も凍り付くような極寒が今昔森にある夜だ。
孤児たちは森に住んでいる。小さな団体も数多くなれば厄介な里に変わる。
今昔森を牛耳る日乃目を孤児たちは慕う。
日乃目は森一番の刀の名手で、男を寄せ付けない腕前だった。
銀矢はその日、吹雪の森で日乃目の襲撃を受けた。
日乃目は銀矢たち保護師を敵視し、ことあるごとに仕掛けて来る。
その代わり、病を患った子供たちや食うに食えない子供を保護師に押し付ける。森で生きていく術を知らない子供らは保護してくれと無言の圧力を掛けてくる。
日乃目はそれだけ頭の回転が早い娘だった。
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