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銀矢と日乃目は刀を交差させるうちに森の奥にある崖へと出ていた。
銀矢は日乃目を追い詰めた。話ができるとそう確信した。
動きを止め、振り返った日乃目の眼差しは吹雪の中でも解るほど冷たい。
軽蔑されているのが遠目にも解るほどだった。
「日乃目。うちの白夜は君たちの不便な生活を心配しているだけなんだ。俺が嫌なら他を連れてくる。話し合いの場を設けてはくれないか?」
「貴方は何も知らない。これからも知らなくて良いことを私は知っている。話し合いなどする必要はどこにもない。私との接触は開かなくていい傷口を開くだけだと何度も申していることです。お引き取りください。私に貴方たちの助けは無用です」
日乃目は頑なに拒んだ。含みを持たせた言い回しに銀矢は気が付いていても日乃目から言葉は返らない。
「何を知っているんだ。俺のことか?」
「……」
「俺の何を知っていて、それを知ることで誰が傷付くというんだ?」
「貴方は知らなくていい」
吹雪は日乃目の言葉を遮る。
銀矢も巻き上がる雪に目を奪われた。
一面に真っ白な空間が広がる。雪が縦横無尽に暴れている。
「俺だって知りたいんだよ。三年前の失った記憶を!」
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