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「あんたが殺したんだ!」
小雪の鋭い声が銀矢にそれ以上の言葉を許さない。
「いや、事故であろう。拙者も見ていた」
信濃が助言したが小雪は耳を貸さなかった。
無理もないことだ。日乃目は小雪に第二の故郷を与えた。居場所を与えた人間なのだ。
銀矢はそれ以降無理に小雪には近寄らなくなった。
ただ、日乃目との会話の切れ端が時折、胸の奥に痛みを覚えさせている。
ふとした瞬間に膿のように膨れ上がり、疼くのだ。
するとどうしようもない気分になり、全てを投げ出したくなる。
だからといって眠ればあの日の光景がぐるぐると脳裏を駆け巡り、安眠の妨害をしてくる。
日乃目が隠していた事実を知りたくとも銀矢にはなす術がない。皮肉なことであった。
春日小雪の件と何事か通じるものがあればとふいに思う。
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