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だが、小雪がおとなしくこちらの意思に従うわけがない。そもそも、日乃目の一件は拗れるばかりで話にもならない。
小雪は謝罪など望んでいない。もう関わらないでくれという。
銀矢も気持ちは分かる。自分でもそうなるだろうことを理解している。
けれども銀矢の仕事は子供の保護だ。
小雪が二十歳を過ぎるまでは保護対象と見なさなければならない。それが保護師の規則とはいえ、感情の拗れは簡単には直りそうもなかった。
4
夕食の匂いに回想から戻ると信濃は寝ていた。
銀矢は五月の手伝いをしに台所へと向かう。
「今日は山魚か、誰かの差し入れ?」
「九十九老人が作った罠のお陰よ」
五月が火鉢を片付ける。
「暑いのにご苦労さん」
銀矢は用意された皿を盆に載せた。
「これが私の副業ですから。さっさと運びましょう。団体さんが来る時刻だわ」
五月はてきぱきと飯や味噌汁の準備をする。毎晩やっているだけに鮮やかだ。米びつに米粒を残さない。鍋に味噌汁を残さない。料理はきっちりと分けられている。
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