一幕 奇妙な命令

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日元の大陸には、草の者が住んでいる里が点在している。 武士政権からの離脱を図った草の者がそれぞれの野心を掲げていることが原因だった。 里の中に白夜党がある。白夜党は釘猫村と名付けた里を今昔の森に面して構えている。 人口八百人。今昔森から伸びる道は堀を繋ぐ橋を通り越し、白夜城へと繋がる。 釘猫通りの中心に茶店「こづち」の暖簾が揺れている。 木造二階建てのこの茶店には、四六時中人が居る。 今日も暑い日差しの中で五月は柄杓で水をばら蒔いた。 店先に打ち水でもしなければ真夏を凌ぐことができない。 いくら忍の修行をしたとはいえ、人間であるのだから暑さには敵わない。ましてや涼しく過ごす為の知恵がある。蚊帳や団扇や扇子、簾などを活用して夏を越すのは当たり前だ。 五月は残りの水を道にぶちまけた。雨上がりを思わせるような水溜まりが出来上がる。太陽の光は朝方でも強く輝いている。昼になればなお気温が上がるのだと思うと五月はそうそうに店内へ逃げ込んだ。
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