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「いつ入ってきたの」
五月が呆れたように聞いた。
「ついさっき。喉が渇いたから」
「話はどこから聞いていたのよ」
「全部聞いていたよ。同じ話はしなくていいから」
銀矢は信濃の前にあった水を飲み干して噎せた。
「なんだ、これ」
「唐辛子入りの水。止める暇もないとはこういうことをいうのね」
五月は意地悪く笑い自分の円眼鏡を直した。
しばらく噎せていた銀矢だったが正直話を聞いて心理状態はままならない。五月や白羽以上に春日小雪の件に納得していなかった。
「で──春日を預けるって、説得して森を出せば良いのか?」
銀矢の舌が若干縺れている。唐辛子が効いているのだろう。
五月は仕方なく杯に水を酌んで銀矢に渡し、向き合うように座った。
「白夜様が話したいことがあるそうよ」
「話?」
「月影の乱について」
月影の乱は武士と忍が互いに分裂したときに起きた戦であった。
二年の月日を隔てて大陸は戦の海と貸し、青葉軍と白夜忍軍の停戦という形で幕を閉じている。
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