日月のいわれ

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冬陸化粧す誉れの雪、春には雪消、夏には高き峰にぞ輝けしは、天上の清きを映すものなりて、秋の峰の紅葉せしは、人の世の愁いを映すものなり。天地の間を行く雨は、使命をおびしも優しく猛々しくありなんとてさざめくものなりて、愁うべきはなき。雨止みて雲晴れし蒼天のもと、露おびて輝けし花は麗しきが、麗しきは花にあらず、そを愛づ心にこそ宿るものなり。海の深くに光はささねど、その清きは例うすべなき威光をたたえん。光ささぬ淵があるとせば、人の心の内の他になしとはいわれしが、淵の水にも色はあれば、光を溶かしこみておのが色に染めんとせしことととらうべき故はあれど、そを粗悪とせしは愚かないわれなり。光は闇の内にこそ輝くものなりて、闇の深まりを嘆くのみでは心の深化も望めなければ。空は日月を抱き、光をも闇をも抱くものなれば、そのもとに生く人の身も両極を持つは普遍の理なり。そを広く世に伝え、正しき道に導かんとて、此が国を、日月と命名す。
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