グラディエーターゾーン

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 全世界で最高ランクの強度と(うた)われるチョコレートボードという材質の扉のドアノブを捻り、青年は扉を潜った。  装飾の一切ない長ドスを左腰に下げ、手のひらサイズの荷物袋を右腰に下げている。  裾の緩い半袖シャツと膝までの短パン姿で青年が歩み立ったのは、観客百万人が導引できる闘技場。  チョコレートボード特有の深い紺色と濃い青色のグラデーションを掻き混ぜたような色合いに囲まれたそこは、広い宇宙に囲まれたような場所。  ここは「グラディエーターゾーン」。  勝てば(かね)が手に入る国。  そして、二人の競技者が揃った会場で柵の無い観客席から歓声や罵声を送る何十万の人間達は皆、競技者だけでなく観客が死ぬことを望んでいる。
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