第1章

3/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
そして、これが最大のポイントなのだが、鈴木首相も阿南陸相も『軍人は政治に関与するなかれ』という、軍人勅喩を忠実に守るという人柄であり、政治的動きには無関心であって、ひたすら任務を遂行するという共通点があったのだ。 あなた方の職場で、誠心誠意職務を全うし、栄達を求めず、ひたすら他人とは公平に接する事を実行している人がいたら…… この二人は、そんな人物であり、それでも昇進して行く能力も兼ねていたのだから、信頼するに足るし、頼もしいと天皇も感じていたと思うのだ。 そんな鈴木首相に、天皇は最後に日本の舵取りを任せた。それは、それまで天皇の気持ちを理解出来ない人達が、日本を敗戦の間際まで追い詰めていたという事であり、政治的に天皇が納得出来て居なかったという意味にも通じている。 鈴木首相は、それを理解していたからこそ、総理大臣を引き受けたのであり、それまで、陸相を固辞していた阿南さんが、鈴木首相の依頼に、アッサリと陸相を受け入れたのも、鈴木首相と阿南陸相の暗黙の了解…天皇の心を1つになって実行しよう…という事だったと思う。 終戦までの戦況をざっとおさらいすれば、海軍は、真珠湾&マレー沖&インド洋&スマトラ沖等で目覚ましい大戦果を上げ、陸軍も又、フィリピン&シンガポール&インドネシア攻略と活躍した。 しかし、ミッドウェイ海戦で惨敗してからの海軍は、全体的に及び腰になり、勝てた戦いでも、しっかり勝ち切れて居なかった。(南太平洋&ソロモン海戦) ガダルカナルに海兵隊が上陸した時に、海兵隊は、強襲上陸もする本格的装備の強力な軍隊だと、陸軍に十分な説明もしなかったから、陸軍は、日本の臨時装備の海軍の陸戦隊くらいに考え、軽装備の一木連隊を送り込んで全滅させてしまった。海軍が、補給に責任を持つと言ったから、ガダルカナルに師団を次々に送り込んで、結局は補給が続かず、飢餓の島となり、多数の餓死者を出してしまった。日本は、補給を軽視したとの指摘があるが、島に補給するには海軍の力が必要であり、海軍が補給に責任を持つのも当然なのだが、結局はそれが実行されずに、見殺しとなってしまったのだ。 フィリピンを攻略した時は、陸軍は2線級の現地アメリカ軍相手の戦勝であるとされ、その評価は低く、海軍の大戦果の前では、評価は無きに等しかったという事も忘れてはならない。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!