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プール開きが始まり、授業でも水泳が入った。
憂鬱なのは、僕だけだろうか?
水に顔をつけるだけでも嫌なのに、朝の洗顔は別として、水泳……。
ため息がでる。
学校の体育の先生は熱心な指導をする。
僕の逃げる場所はない。
消毒剤の入った小さな浴槽に入り、準備運動をする。
みんなはプールに普通に入ってゆくが、僕は入るのを躊躇っていたら、先生が実に爽やかにプールに入れと言ってきた。
覚悟を決めてプールに入る。
先程とは違う水の冷たさが全身を包んだ。
僕は顔だけは絶対に水につけないよう苦心してると、ボードが投げられ、顔をつけて泳ぐことを求められた。
それでも躊躇っていたら、級友が後ろから頭をおさえ、僕は顔を水につけて、息を派手に吹き出した。
途端、僕は見てしまった。
プールの水底にあるアレを……。
慌てて水から頭を出して、逃げるようにプールから出ようとするも、級友が邪魔をして出ようにも出れない。
焦れば焦るほど僕はプールにのまれてゆく。
足のつくプールなのに足がつかない。
嫌だ!
アレに捕まりたくない一心でプールから出ようともがいた、途端。
アレが僕の足を引っ張った。
僕はプールの中に引きずられた。
級友は僕が足を滑らせただけだろうと思っているのかもしれない。
だか、実際には僕はアレにとらわれ、水の中でもがいた。もがけばもがくほど、空気が抜ける。
アレが増える。
増えて、僕の身体に絡みつく。
意識を失いかけた時、力強い腕に引っ張りあげられた。
「大丈夫か! 山崎!山崎!」
僕の名前を連呼する体育の先生を認め、僕は大量の水を吐いた。
その時、女子のひとりが悲鳴をあげた。
赤黒くついた無数の手の跡。
僕の身体中についた手の跡に、悲鳴がもれる。恐怖が伝染する。
アレの跡だということはすぐにわかった。
先生はプールに入っている全員を、プールからあげさせた。
僕がプールの水底で見たのは無数に群れた手の花畑みたいなもの。
ゆらゆら綺麗に揺れながら、何処かおぞましさを感じさせるものだった。
アレはなんだろう。
どこのプールにもあるのだろうか?
僕はその後以来、プールには入っていない。
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