第1章

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1999年 8月10日俺、3歳の誕生日 俺の誕生日パーティーは毎年父の仕事の帰りと共に始まっていた。父がケーキとプレゼントを持って帰って来てくれるのだ。でも、その年のその日父は帰ってこなかった。 「颯太くんは何か知らないかな?お父さんがなぜ出て行っちゃったのかとか。」 警察の人は僕と妹にまで聞いてきたが妹は2歳俺は3歳、意味がわかるわけがない。 「お父さんは出て行ったの?いなくなったんじゃないの?」 ただ疑問に思ったのはこの言葉。警察側はまるで家出みたいに言って、事件にしようとしてくれなかった。 16年後の夏 現在 大学一年生で刑事を目指している。 ブーブーブー、スマホのバイブ音 「あれ、恭平さん。昨日、電話かかってきたばかりなのに。」 康本 恭平刑事、41歳 事件当時25歳、親父を見つけられない罪悪感から、毎月電話で謝罪をしてくる。時に迷惑だと思うが、唯一信頼できる刑事だ。俺が刑事になりたいのは、親父を探さず家出にしたあの刑事たちを刑事だと認めたくないからである。 恭平さんに会いたいと言われ、喫茶店で、待ち合わせすることになったが、どういうことか、妹もいた。 妹は少し離れた華原学園という名門に通っている。丁度帰省の日だったのか。 「お兄ちゃん、久しぶりー!」 「お、おう。」 妹の愛はいつもテンションが高い。 喫茶店でパフェとピザを注文してるため、元気だとすぐわかる。 「ご注文は?」 という店員の声にすかさず、 「アイスコーヒー、ブラック」 と言える俺とは、真逆でどっちにするか迷った結果時間をかけすぎて店員にどっちも勧められたのであろう。 その後、恭平さんが来た。 顔を見るのは中学校卒業して以来か。 少し老けたな。 「恭平さん!久しぶりー!」 「元気だねー。愛ちゃん。」 「恭平さんも珍しく嬉しそうだけどなんかあった?」 俺の質問中に店員が来たが恭平さんは聞かれる前にアイスコーヒーを注文した。 俺がアイスコーヒーを頼む時間より、5秒早かったー。くそー。と、そんなことはどうでもいい。 「で、話というのは?」 切り替えて、俺は聞いた。 「お父さん、家出じゃないよ。」 「え?」
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