13人が本棚に入れています
本棚に追加
男の瞼が、ゆっくりと開いた。
どうやら、気を失っていたようだ。
無理もない……、男は街を探して、もう丸二日も砂漠の中を彷徨っていたのだから。
だが、どこまで歩いても砂の海が広がるばかりで、街どころか水場さえ見つからなかった。
そしてとうとう男は力尽き、倒れてしまったのだった。
砂漠には相変わらず灼熱の太陽が照りつけ、焼けるように暑く、男の喉はカラカラに渇いていた。
それでも男は、疲れ切った身体を無理やりに起こす。
「……っ!」
その瞬間、目の前に見える光景に男は驚愕した。
まるで砂漠に細い木が生えているみたいに、砂の中からパイプが伸びている。
そしてそのパイプの先には、蛇口がついていた。
それはひとつだけでなく、たくさんのパイプと蛇口がぐるりと男を取り囲んでいる。
蛇口の形や大きさはどれも同じだったが、色だけがひとつひとつ違っていた。
「何だ、これは」
幻覚を見ているのか……、男はそう思った。
最初のコメントを投稿しよう!