36色の蛇口

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 男の瞼が、ゆっくりと開いた。  どうやら、気を失っていたようだ。  無理もない……、男は街を探して、もう丸二日も砂漠の中を彷徨っていたのだから。  だが、どこまで歩いても砂の海が広がるばかりで、街どころか水場さえ見つからなかった。  そしてとうとう男は力尽き、倒れてしまったのだった。  砂漠には相変わらず灼熱の太陽が照りつけ、焼けるように暑く、男の喉はカラカラに渇いていた。  それでも男は、疲れ切った身体を無理やりに起こす。 「……っ!」  その瞬間、目の前に見える光景に男は驚愕した。  まるで砂漠に細い木が生えているみたいに、砂の中からパイプが伸びている。  そしてそのパイプの先には、蛇口がついていた。  それはひとつだけでなく、たくさんのパイプと蛇口がぐるりと男を取り囲んでいる。  蛇口の形や大きさはどれも同じだったが、色だけがひとつひとつ違っていた。 「何だ、これは」  幻覚を見ているのか……、男はそう思った。
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