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「大切なものって何だ……、俺にとって大切なもの」
男は考えた。暑さと渇きで朦朧とする中、必死に考えを巡らせた。
「そうか!」
そのとき、何かがひらめいた。男は勢いよく立ち上がって、蛇口に向け走りだした。
──金色の蛇口だ。
間違いない……、そう確信してひねった蛇口だったが、またしても水は出なかった。
男は、がっくりとうなだれた。
「金色……すなわち『カネ』だと思ったんだな」
老人が言った。
「お前が子供だった頃、父親の作った借金のせいで一家は離散した。その後も貧しい生活を強いられたお前は、中学を出てからすぐに働き始めた」
まるで男の人生を知りつくしているように、老人は話し続ける。
「お前のカネへの執着は並はずれたものだった。だがその執着のおかげで、お前は起業家として成功したのだ」
「だったら、なぜ水が出ないんだ!」
男は、老人に向かって怒鳴った。
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