36色の蛇口

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「次が、3回目の選択だ」  しかし老人はそれには答えず、また杖を持ちあげながら言った。 「最後のヒントだ。それは、今のお前に欠けているものだ」 「……欠けているもの?」  男はその意味を考えたが何も思い浮かばず、その場で頭を抱えた。  本当はどの蛇口からも、水なんて出ないんじゃないか……、そんな考えが頭をよぎった。  だがそれを振り払うように男は頭を振って立ち上がり、色の違う蛇口をひとつひとつ見定めながら歩き始めた。 (大切で欠けているもの……、それは何だ。水か?、水だから「青」なのか、それとも希望を表すような「黄色」とか「緑」か)  ぶつぶつと呟きながら歩いていた男が、ある蛇口の前で立ち止まった。  複雑な顔で、男はじっとその蛇口を見つめている。 「ほう、その色を選んだか」  老人は、また髭を撫でながら言った。
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