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初めに洗面台の排水口の蓋を持ち上げた。
絡む黒い髪がつつっとついて持ち上がる。
「──っ。」
巧の顔がゆがむ。
「警察に言った方がいいよ。早く。そうしよう。
だって、朝に掃除したのッ。ここをッ。」
気持ちが悪い。私たちの知らないうちに女が侵入して髪の毛を仕込んだ。
流しっぱなしにした激しい水流が髪の毛を飲み込んでいく。
私の悲鳴に似た叫びに巧が携帯電話を取りにリビングへ戻った。
「早くかけてっ。」
これまで我慢していたものが溢れ始めた。
ずっと巧の浮気を疑っていた。そして見えない相手と戦っていたのだ。
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