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浮気じゃなかった安堵より気味悪さが勝る。
髪の毛は排水口から存在を主張する。蓋に絡んだままの髪と流れて行った髪が私をまだ苦しめる。
巧が電話をかけにいった間に浴室の排水口を見る。もう彼を近づけたくない。
蓋を外すといつもよりもたくさんの髪が絡まっている。黒い束が引っかかりながら持ち上がってくる。
生臭い臭いも同時についてきた。
顔をしかめ、用意していた雑巾で蓋を掴み引き上げた。
今日は目を逸らしたくなる。ただの抜け毛の段階をとっくに超えた量の髪の毛に彼女の怨念のようなものを感じた。
危険すぎる。
早く手を打たなければ。
全て持ち上げ蓋を床に置いた。
毛の塊がびちゃと嫌な音を立てる。
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