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持っていた蓋を投げつけた。
床に当たりガタンと大きな音が鳴る。
蓋は床に転がり絡んだ髪はびちゃりと音を立てた。
床に残った髪の毛の塊から紅い爪がのぞいている。
「──ッ。」
床から存在を主張しているものから女の強烈な念を感じた。
「巧ッ。たくみーッ。」
浴室を転がり出て巧の元へ這うように向かった。
リビングで巧は警察に電話中だ。
「あ、少し待ってください。」
巧が通話口を指で塞ぐと私の異変に駆け寄ってきた。
「またあったのか?」
「ゆ……っ。ゆ、ゆ指っ。指がっ。」
紅いネイルが施された指に黒い髪が幾重にも巻かれ、排水口の蓋から垂れ下がっていた。
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