失恋、シマシタ

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ああ迷惑かけてばっかや……。 これまでお酒で迷惑なんてかけたことなんて一度もなくて、自分ではそこそこ呑めるつもりでいたのにこの失態。 襲いくる自己嫌悪にきゅっと奥歯を噛んで、しばらく絶対お酒なんて飲まないぞと心に誓う。 「なんか食いに行く?」 「やっ! いいです帰ります!」 乏しい私の財布の中身で買えるのはせいぜいコンビニのパンくらいだ。 それをわかって言っているのかもしれないけど、これ以上迷惑なんてかけられない。 ブンブンと両手を振って彼の誘いを辞退した私は、この時自分の口から飛び出した言葉にようやく大切なことが浮かびあがってきた。 「ってかすみません……ここ、どこですか?」 乗っていたはずの大江戸線は最寄り駅から五つ先まで続いている。手前で降りた可能性だってある。 流石に電車は定期にチャージが残ってると思うから多分大丈夫だと思うけど、それでも今いる場所がわからない限りは帰れない。 最後まで来てたらややなぁ……。 なんて改めて落ち込む私に彼は、 「落合南長崎やけど」 あっさりと私がいつも使う駅を口にした。
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