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いつもは駅から直結のショッピングセンターの中にあるスーパーで買い物をして帰るのだけど、今日ばかりはただ早く帰りたかった。
まぁ、お金がなかったのもあるけれども。
とにかく、家村さんのマンションが線路から然程離れていなかったこともあり、私は迷うことなくすんなりと帰ることができた。
「……はあっ」
我が家をこんなに愛おしく思う日が来るとは。
鞄を放り投げベッドに横になった私は盛大に息を吐き出す。
いつもの感触いつもの匂い。
その懐かしさはちょっとした旅行から帰ってきた時のものによく似ていた。
「……あほや……」
ほんまに。
婚約破棄という人生において一番かもしれないショックも、この自己嫌悪の感情にほんの少しだけぼやけた気がする。
弱り目に祟り目。
自業自得かもしれないけれど、昨日からの私は踏んだり蹴ったりだ。
「……、あかん」
このままやったらとことんヘコみそう。
じわりと目尻に浮かんだ涙をこすり、勢いよく起きあがるとベッド脇にあった鞄からスマホを取り出す。それはもう家に帰った時の流れみたいなものだった。
カチ、とホームボタンを押すと一件、ラインの通知が表示される。
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