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『昨日は無事帰れた? あんたのお陰でこっちは若干二日酔いだわ。明日は出れる?』
……帰れていません。
遥香からのラインに頬がひきつる。
そういえばまた連絡するって言ったきり連絡していなかった。いやまぁ出来る状況ではなかったんだけど。
二日酔いすら忘れてたわ。
私の単純な頭は今更思い出したように僅かに鈍く痛んで、それを誤魔化すようにくしゃりと前髪を掻きあげる。
けれど遥香の言いたいことはそこじゃない。
最後にある『明日は出れる?』の部分だ。
「……、勿論、出るよ」
じゃないとなんか逃げるみたいやん。
本当ならしばらく――一生、二人の顔なんて見たくない。
だけど私は社会人で。
二人がいるからといって急に会社を辞めるなんて幼稚なことは出来ないししたくない。
それに好きな人をなくして仕事までなくしたら、それこそ人として立ち直れなくなりそうだ。
今辞めたら私一人が負け犬。
そんなの、絶対に嫌だ。
「……あーお腹減った」
お礼と連絡出来なかった謝罪と明日のことと。
色々と心配してくれる優しい親友に感謝して返事を返すと、いつの間にか寄っていた眉間のシワを伸ばしてごろりと寝返りをうつ。
昨夜のことはまた会ってから言おう。
次から次へと心配をかけてしまいそうな自分に苦笑いして。
とりあえず今は腹ごしらえでもしようと、重くなった頭に顔をしかめながら、私はのろのろと立ち上がった。
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