失恋、シマシタ

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* 「――ふざけんなっての。なーにが私が全部悪いんですやねん。やることやって子どもまで作ってやで!? 男が悪くないわけないに決まってるやん!」 飲みながらつい声が大きくなるのは私の悪いくせだ。 いくら賑やかな居酒屋とはいえ標準語がはびこるこの辺りで関西弁は目立つのだろう、内容も内容なだけに周りからはちらちらと好奇の視線が向いて、目の前に座る遥香(はるか)の頬が微かにひきつる。 大丈夫。これだけ周りが見えてるなら私はまだそんなに酔ってない。 テーブルに置いたいも焼酎のグラスをもう一度煽ると、遥香が待ったとばかりに手のひらを私に向けて大きくため息をついた。 「明希(あき)、論点ずれてる」 遥香は同じ会社に時同じくして入った、いわゆる同期というやつだ。 たまたま新人研修で同じグループになって以来、意気投合した私たちは別部署ながらにこうして気が置けない間柄を続けている。 あの最低最悪の空間を抜け出した私は即、遥香に電話をかけた。 今日が土曜日で本当によかったなんて思う私は、やっぱりまだ大丈夫だ。 「ずれてへん! あの子も聡(さとる)もほんっとサイテー」
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