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「や、でもなんもなかったし……」
遥香の言うことはごもっともなのだけれど。
そんな風に怒られるとつい言い訳じみた言葉を探してしまう自分が悲しい。
「それはそれ! もし相手が犯罪者まがいの変態野郎だったらあんた今頃どうなってるかわかる?」
「わ、わかります……」
だけどやはり紡がれる正論にぐうの音も出ない私は大人しく引きさがるしかなく。
胸にグサリと突き刺さる言葉にうなだれ、足元を見つめる。
「……で、その人本当に大丈夫なの?」
心配、してくれているのだ。
幾分怒りの取れた声に申し訳なさを覚えながら、昨日の家村さんのことを思いだしてみる。
「……多分。まぁあれから連絡もないし」
家に帰ったあと、私からお礼と帰れた報告を兼ねて連絡するべきなのか少しだけ悩んでみたけれど、結局何もしなかった。
勿論向こうからの連絡もなく一日が過ぎ、今に至る。
まぁ半ば言いくるめられた感はあるものの、あの約束がある以上どちらにしても近く連絡は取らなければならないのだけど。
やはりもう一度会うのはどうなんだろうと、不安もあった。
「……や、やっぱりやめた方がいいと思う?」
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