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オフィスのある三階の踊り場まであとちょっと。
考えれば考えるだけわからなくなったあの人とのことを、ただ外から見てどうなのか知りたかっただけなのだけど。
そんな私を急に立ち止まってじっと真顔で見つめてくる遥香に、少しばかり居心地が悪くなる。
や、やっぱりやめた方がいいんかな……。
「……や、まぁいいんじゃない? ご飯くらい」
けれどしゅるしゅると弱気になる私に発せられたのは予想とは真逆の言葉で。
思いきり反対されることを覚悟した私は一瞬呆気にとられて固まってしまった。
「え、でもさっきは……」
「まぁ心配は心配だけどさ、迷うくらいなら行ってみてもいいんじゃない?」
嫌なら迷わないでしょ、と再び階段を登り始めた遥香の一言が妙に的を得ている気がして納得してしまう。
確かにそうかも。
「向こうもわかってるんでしょ? なら利用させてもらえばいいのよ」
利用、か。
言い方は悪いかもしれないけどまぁぶっちゃけその通りなわけだし、かつあの時の借りも返せるなら確かにそれもいいのかもしれない。
そんな思考を巡らせていれば、カツン、と一際大きなヒールの音が聞こえて、フロアに出るドアの前に立った遥香が振り返る。
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