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そんな仔犬な後輩くんと温かなココアの缶に少しだけ心癒された私は、改めて気合を入れ直してフロアへ戻る。
大丈夫、私には遥香もいる。
まだ顔を合わせただけ。ここで折れてどうする。
そう自分に言い聞かせ、何でもない顔を貼りつけデスクに向かう。
幸い彼女は私の席の斜め後ろで、座ってしまえば私とは背中合わせになってその姿は見えなくなる。
聡は松田くんとは逆の二つ横だけど同じ並びだし見ようとしなければ平気だ。
大丈夫。大丈夫。
それでも、いつの間に出勤していたのか、既にデスクに座っている聡の姿に心臓がうるさい。
ついこの前までは仕事の合間に顔が見れることが嬉しくすらあったのに、その間にも二人は密かに関係していたのだと思うと本当に自分が馬鹿みたいだ。
そんな怒りを飲み込み、なんとか自分の机だけを見つめた私はギュッと奥歯を噛み締める。
さっきまでは何もなかった筈のそこに、見慣れない書類が置かれているのに気がついたのはその直後だった。
……、これ。
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