353人が本棚に入れています
本棚に追加
取り出したその画面を確認すると、そこに表示されていたのは見慣れない『家村さん』の文字で。
「……、あ!」
一瞬首を傾げかけた私はエレベーターの扉が開くと同時にその名前を思い出した。
え、え、どうしよいきなり電話っ!?
突然のことに、聡のこととはまた別の次元で頭がパニックになる。きっと今、物凄くおかしな顔をしていたに違いない。
エレベーター前立っていた人の視線を感じながら、私は震え続けるスマホを手に階段のある扉の向こうへと飛び込んだ。
重い扉で仕切られたそこは普段から人の出入りが少ないからだ。
落ち着け落ち着けと息を吐いて、改めて画面に目を落とす。
鳴り始めてしばらくたつというのにまだコールは鳴り続けている。切らないということは何か言いたいことがあるのかもしれない。
それに、あとでかけ直す方が緊張するに決まってる。
「……よし」
ほんの少し画面を見ながら悩んだ私は小さく呟き、恐る恐るタップしたそれをゆっくりと耳に当てる。
「……はい」
『あ、出たわ!』
すると、何故かそこから聞こえてきたのは女の人の声だった。
最初のコメントを投稿しよう!